論文解説

ビタミンDと風邪:毎日飲むのと月1回まとめて飲むのでは違う?

公開 著者 そのサプ編集部

結論

ビタミンDのサプリを毎日・毎週少しずつ飲んだ人では、風邪など(急性気道感染)をひく人が約19%少なく、月1回などまとめて大量に飲む方法では差は見られなかった[1]。これはRCT 25本・11,321人分のデータをまとめた2017年のメタ解析の結果で、もともと血中のビタミンDがかなり低い「不足」の人ほど差が大きかった[1]。

S研究が多く質も高いメタ解析

ランクは効き目じゃなく、研究の量と質。

ビタミンDと風邪:毎日飲むのと月1回まとめて飲むのでは違う?のイメージ写真(原料・カプセルなど)
目次
  1. どんな研究?
  2. ビタミンDは毎日飲むのと月1回まとめて飲むのとで違う?
  3. この研究からわからないことは?
  4. 日常では何を確かめればいい?
  5. ビタミンDについてよくある誤解は?

どんな研究?

Martineau AR, et al. BMJ 2017 の概要[1]
項目内容
対象風邪など(急性気道感染)を調べたRCTの参加者(14か国)
人数11,321人(RCT 25本)
デザインRCTのメタ解析(参加者ごとのデータ)
主要結果毎日・毎週:約19%減/まとめ飲み:差は見られなかった
研究カード(対象・人数・デザイン・主要結果)

この研究は、ビタミンDのサプリを飲むグループと比べるグループにくじ引きで分けた試験を集め、風邪など(急性気道感染)をひく人の数に差があるかを調べた研究である。2017年に医学誌BMJに掲載された[1]。

メタ解析とは、複数の研究の結果をまとめて分析する研究である。RCT(ランダム化比較試験)とは、参加者をくじ引きで分け、条件の違いだけを比べる本格的な試験である。この研究は、RCT 25本・14か国・11,321人分の参加者一人ひとりのデータを集め直して分析したメタ解析だ[1]。

論文は、この結果の根拠の質を「高い」と評価している。編集部のまとめでは、この研究はSランクにあたる。ランクの読み方は ランクの定義(/rank/) を参照(ランクは効き目の強さではなく、研究の量と質)。

ビタミンDは毎日飲むのと月1回まとめて飲むのとで違う?

違いが見られた。毎日または毎週少しずつ飲んだ人では、風邪など(急性気道感染)をひく人が約19%少なかったと報告されている[1]。一方、月1回などまとめて大量に飲む方法では、差は見られなかった[1]。

毎日・毎週飲んだ「不足」の人の中で

4人に1人
風邪をひく人が1人減る計算

血中の量が「不足」の人全体の中で

8人に1人
飲み方を問わず、風邪をひく人が1人減る計算

参加者全員の中で

33人に1人
「不足」かどうかを問わず、風邪をひく人が1人減る計算
同じ研究でも、誰の中で計算したかで数字は大きく変わる。飲み方と「不足」かどうかで分けて読む。

ここでの「まとめて大量に飲む方法」は、1回3万IU以上を月1回〜3か月ごとにまとめて飲む方法で、海外の試験で使われている[1]。IUとは、ビタミンの量を表す国際単位である。

差がとくに大きかったのは、もともと血中のビタミンDがかなり低かった人である。原著では、試験開始時の血中25(OH)D(血液中のビタミンDの量の目安)が25nmol/L未満の人を「不足」としている[1]。

毎日・毎週飲んだ「不足」の人では、4人が飲んで風邪をひく人が1人減る計算になり、割合では約70%少なかった[1]。この数字は6試験・234人の分析にもとづく[1]。「不足」の人全体では8人に1人(14試験・538人)、参加者全員では33人に1人で、全員の場合は約12%の減少だった[1]。

NNTとは、何人が飲んだときに風邪をひく人が1人減るかを表す指標である[1]。数字が小さいほど、飲んだグループと比べるグループの差が大きいことを意味する。

この研究からわからないことは?

この研究でわかるのは、風邪など(急性気道感染)をひく人の数との関係に限られる。急性気道感染とは、空気の通り道である上気道・下気道に起こる感染である。それ以外の病気や体調との関係は、この研究では扱っていない。

この研究でわかること

  • 毎日・毎週の少量で、風邪などをひく人が減っていた
  • 月1回などのまとめ飲みでは、差は見られなかった
  • 血中の量が「不足」の人ほど、差が大きかった

まだわからないこと

  • 風邪など以外の病気や体調との関係
  • まとめ飲みで差が出なかった理由(著者の考察のみ)
  • 日本の検査で「不足」の人にそのまま当てはまるか
  • 季節差の調査が全国の状況を表すか
結果は風邪など(急性気道感染)に限られ、まとめ飲みで差が出なかった理由は著者の考察にとどまる。

まとめ飲みで差が見られなかった理由は、確かめられた事実ではない。論文は、まとめ飲みでは血中濃度が大きく上下し、飲んだ後の高い濃度が体の調節を乱すというViethの説などを紹介し、一因かもしれないと考察している。これは著者の考察であり、この研究で確かめたものではない。

「不足」の基準にも注意が必要だ。原著の「不足」は25nmol/L未満で、日本の検査で使われる「不足」より厳しい基準である[1]。日本の検査で「不足」と言われた人が、そのまま原著の「不足」の人にあたるとは限らない。

また、4人に1人という数字は6試験・234人という限られたデータから出たもので、参加者全員の33人に1人とは大きく離れている[1]。メタ解析の結果は集めた試験の条件に左右されるため、どの条件の結果なのかを分けて読む必要がある。

日本人の季節差のデータは、北海道・熊本の成人107人を対象にした別の調査によるもので、全国の状況を代表するとは限らない[2]。

ここは
見落としがち…

日常では何を確かめればいい?

まず確かめられるのは、自分の飲み方と、ビタミンDが「不足」しているかどうかである。この研究では、この条件の違いで風邪などとの関係に差が見られた。

すでにビタミンDを飲んでいる人は、月1回などのまとめ飲みか、毎日・毎週の少量かを確かめる[1]。まとめ飲みで差が見られなかったという結果は、飲み方を見直す材料になる。

次に、血液検査で「不足」と言われたことがあるかを思い出す。北海道・熊本の成人107人の調査では、ビタミンDが足りない人(50nmol/L未満)は夏で48%、冬で82%と報告されている[2]。冬は足りない人が多いため、風邪の季節の前に、血中のビタミンDを測れるか医療機関で聞くこともできる。

体調に不安がある場合や、持病・服薬がある場合は、医師・薬剤師に相談してください。

ビタミンDについてよくある誤解は?

よくある誤解は、「ビタミンDならどう飲んでも同じ」「誰が飲んでも同じだけ風邪が減る」といったものだ。この研究の結果は、どちらとも合わない。

まず、飲み方は結果に関係していた。毎日・毎週の少量で差が見られ、月1回などのまとめ飲みでは差は見られなかった[1]。

「一度に多く飲むほど良い」という考えも、この研究の結果とは合わない。1回3万IU以上をまとめて飲む方法では、風邪などとの関係に差は見られなかった[1]。

「4人に1人」は、毎日・毎週飲んだ「不足」の人に限った数字である。参加者全員では33人に1人だった[1]。

そう思って
いたかも…

よくある質問

で、私は
飲むべき?

日本の健康診断で「不足」と言われたら、この研究の「不足」と同じ?

同じとは限らない。この研究の「不足」は血中25(OH)Dが25nmol/L未満で、日本の検査の「不足」より厳しい基準である[1]。自分の数値がどちらにあたるかは、検査を受けた医療機関で確かめられる。

月1回タイプのビタミンDを飲んでいる。やめたほうがいい?

編集部は、続けるか・やめるかの判断は示さない。この研究では、月1回などまとめて大量に飲む方法で、風邪などとの差は見られなかった[1]。体調に不安がある場合や、持病・服薬がある場合は、医師・薬剤師に相談してください。

ビタミンDを飲む時間帯で違いはある?

この研究は飲む時間帯を比べておらず、原稿でも扱っていない。この研究で比べたのは、毎日・毎週の少量か、月1回などまとめて大量かという飲み方の違いである[1]。

ビタミンDは風邪以外にも関係がある?

この研究が調べたのは風邪など(急性気道感染)だけで、それ以外の病気との関係は原稿では扱っていない。ほかの病気については、それぞれ別の研究を確かめる必要がある。

日本人は冬にビタミンDが足りなくなりやすい?

北海道・熊本の成人107人の調査では、足りない人(50nmol/L未満)は夏で48%、冬で82%だった[2]。対象は北海道と熊本に限られるため、ほかの地域では状況が異なる可能性がある。

出典

原著も
見てみようかな

論文(DOI)

  1. Martineau AR, et al. Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data. BMJ. 2017;356:i6583. doi:10.1136/bmj.i6583
  2. Asakura K, et al. Vitamin D Status in Japanese Adults. Nutrients. 2020;12(3):743. doi:10.3390/nu12030743

本文の [1] [2] は上の番号の論文です。原著照合日:2026年10月30日。数値は原著・公表資料と照合したものだけを載せています(照合の手順)。

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